政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「あの、それだとショーを回るだけで終わってしまいますし、時間が重なっているところも……」

「でも清華は全部行きたいんだろ」

彼の手際はよく、あっというまにスケジュールができていく。

「なのに俺のために我慢させるとかできない」

なんでもないように言い、携帯に指を走らせる彼を無言で見つめる。
いいのかな、本当に?
零士さんにはなんの得もないのに?

「だいたい、清華が全部と言ってもかまわないと思っていた。
だから、問題ない」

ようやく顔を上げた彼と、レンズ越しに目が合った。
目尻を僅かに下げ、眩しそうに私を見ている。
どうしてこの人は、昨日会ったばかりの私にそこまでしてくれるんだろう。
嬉しいけれどそれは私を戸惑わせた。

「零士さん、ありがとうございます」

それでも心の底からお礼を言う。

「別に。
俺は清華の願いなら、なんでも叶えてやりたいだけだ。
……ほら、行くぞ」

「あ、はい!」

零士さんに急かされるように出発する。
パリにいるあいだは忙しくなりそうだ。
日本に帰ったら理由を聞いてみよう。

会場で零士さんはほぼ顔パスに近かった。
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