政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「ん」
立ち上がった男性――お兄さんは私の頭を軽くぽんぽんした。
「またあんなヤツに会わないうちに、早く家へ帰れ」
お兄さんがにっこりと私に笑いかける。
途端に父と喧嘩して家を飛び出てきたのだという現実を思い出した。
「じゃあ」
「あの!」
去ろうとする、お兄さんのベストのベルトを思わず掴んでいた。
ぴたりと足を止め、お兄さんが振り返る。
「えっ、あっ、……なんでもない、です」
適当に笑って誤魔化し、ベストから手を離す。
お兄さんは額に手を当てて大きなため息をつき、二、三度頭を振ったあと私の顔を見た。
「……もしかして家に帰りたくないのか」
レンズの向こうから私を見つめる瞳は嘘を許してくれそうにない。
「……はい」
今度は腰に手を当て、再びお兄さんが大きなため息をつく。
「とりあえず、理由を聞いてやるからどこか入ろう」
「あっ、はい」
お兄さんに促され、歩きだす。
背が高いからか歩くのが速い。
追いつくのに必死だ。
立ち上がった男性――お兄さんは私の頭を軽くぽんぽんした。
「またあんなヤツに会わないうちに、早く家へ帰れ」
お兄さんがにっこりと私に笑いかける。
途端に父と喧嘩して家を飛び出てきたのだという現実を思い出した。
「じゃあ」
「あの!」
去ろうとする、お兄さんのベストのベルトを思わず掴んでいた。
ぴたりと足を止め、お兄さんが振り返る。
「えっ、あっ、……なんでもない、です」
適当に笑って誤魔化し、ベストから手を離す。
お兄さんは額に手を当てて大きなため息をつき、二、三度頭を振ったあと私の顔を見た。
「……もしかして家に帰りたくないのか」
レンズの向こうから私を見つめる瞳は嘘を許してくれそうにない。
「……はい」
今度は腰に手を当て、再びお兄さんが大きなため息をつく。
「とりあえず、理由を聞いてやるからどこか入ろう」
「あっ、はい」
お兄さんに促され、歩きだす。
背が高いからか歩くのが速い。
追いつくのに必死だ。