政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
周りに座っている客は世界でも有数の富豪ばかりだ。
そこのお得意様ということは、神鷹はそれだけ桁違いの家というわけだ。

まもなくショーがはじまった。

「うわーっ」

思わず、感嘆の声が漏れる。
プレタポルテのショーは見たことがあるが、オートクチュールは初めてだ。
プレタと違い、豪華なドレスたちに目が奪われる。
圧巻されて語彙力が崩壊し、凄いとしか出てこない。
それでも必死に、隅々まで目に焼き付けた。

「そろそろ行くぞ」

「え、もうですか?」

まだ途中だというのに、零士さんが出るように促してくる。

「次のショーがはじまっている。
行かないと終わってしまうぞ」

「え、そんな。
あとちょっと、あとちょっとー」

「次のショーを見ないのならいいけどな」

「うー」

未練たらたらのまま会場を出た。

「最後まで見たかったですー」

移動の車の中でつい、不満を漏らしてしまう。

「録画映像を送ってもらうように手配してあるから、我慢しろ」
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