政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
きっと彼としてゆっくり歩いてくれているんだろうが、それでも早歩きでなければ追いつけなかった。

「俺が歩くのが速い……よな」

申し訳なさそうに聞かれたが、はい、そうですねとは言えない。

「えっと……」

背の高い零士さんに対して、私が低すぎるのはわかる。
零士さんはここでも頭一個分くらい出るほど長身だが、私はかろうじて一五〇センチとミニマムサイズなのだ。

「んー……ああ!」

顔を上げ、ぱっとなにか思いついた顔をしたかと思ったら、零士さんは私を――抱き上げた。

「えっ、あの!」

「俺が清華を抱えて歩けば問題ない」

彼はこれで解決だ、って様子だが、……ええっと?

改めて、現状を確認する。
軽く彼の腕に座らせるような、お子様抱っこ。
さっきから人目が、くすくすと笑う声が、痛い。
いくらアムールの国フランスでも、こんな格好で連れて回られる恋人はいないだろう。

「……降ろして、ほしいです」

熱い顔でそっと、彼の胸を押す。

「でもそれだと、清華が歩くのが大変だろ?
それに保安上も安心できる」
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