政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
しかし零士さんは降ろしてくれそうにない。
それどころかそのまま歩きだした。

「零士さん!」

「ん?
寄りたい店でもあったのか?」

抗議の声を上げたけれど、彼は涼しい顔でにっこりと私に笑いかける。
これはもう、諦めるしかないのかな……。

ぷらぷらと零士さんに抱き抱えられてシャンゼリゼ通りを進む。

「あ、あそこ、見たいです」

「了解」

私が指さす店に零士さんは入り、そこで降ろしてくれた。

「そういや、服を買ってやると言ったのに、あまり買ってないな」

着替えなしでパリに来たので、ショーの隙間時間でバタバタと購入はした。
しかしそんな状態だったのでほぼマネキン買いで、ほとんど見ていない。

「よし、今日は服を買うか!」

なんだかご機嫌に零士さんは私の服を選んでいる。
こういうのも、悪くない。

散々買い物し、カフェで昼食を取る。

「そう言えば指環はどうする?」

「指環……?」

なにを聞かれているのかわからなくて、首が斜めに傾いた。
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