政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
膝を折り、零士さんが顔を近づけてくる。
レンズの向こうで瞼か閉じられ、私も自然と閉じた。
零士さんのそれが唇に触れて離れる。
冷たいけれどそれは、私の心にぽっと温かい火を灯した。
ゆっくりと零士さんの目が開き、視線を絡ませたまま離れていく。

「……愛してる」

甘い声が、心地よく私を酔わせた。

「少しずつでいい、俺を好きになってくれ」

そっと零士さんが、私を抱き締める。

「それでいつかきっと、……清華のすべてを、俺のものにしてみせる」

彼の背中に回した手に、きゅっと力が入った。
好きになる予感はすでにある。
だから――キス、した。
でも零士さんが望むように、深く愛せるかは自信がない。
そもそも、彼がどうしてここまで、私に執着しているのかわからないのだ。

「零士、さん」

「ん?」

私を抱き締めたまま、彼は離さない。

「零士さんは私のどこがいいんですか?」

零士さんは黙ったままで、なかなか返事がない。

「んー、そうだな。
可愛いところ、……とか?」

見上げた彼の首が、僅かに傾いた。
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