政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
零士さんが台湾に旅立った翌日は、彼の実家へ行った。

「でっかい家」

車は森のようなところを進んでいく。
森から……というよりも、この少し小高い丘全体が神鷹の敷地だ。

「これで離れだもんなー」

母屋ではなく、和建築の離れへと回る。
その離れだけで私の実家ほどありそうだ。
しかもこれが、お義母さまの趣味のためだけの建物……となると、私でも信じられない。

「ようこそ、清華さん」

わざわざ玄関で、お義母さまが出迎えてくれた。

「こんにちは、お義母さま。
本日はよろしくお願いいたします」

促されてお義母さまと一緒に中に入る。
今日、私がここに来たのは、お義母さまのお花のお稽古――という名のサロンに参加するためだ。

座敷には多くの人がいた。
男性もちらほらとはいるが、ほとんど女性だ。
年齢は私の祖母くらいから大学生くらいまで幅広いが、半数以上が二十代くらい。
ここが零士さんの、結婚相手選定の場だったという噂も納得だ。

中に入った途端、注目された。

「……あれが零士さんの」

「……あんなのが?」
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