政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
お稽古が終わったあとは、部屋を移動してお茶がはじまる。
お稽古は口実で、こちらがメインと言ってもいい。

はじまってから皆、ちらちらと私を見ながら誰が最初に行くか牽制しあっている。
その中から私より少し年上くらいの女性が、周りを制するように出てきた。
挨拶をしたときに、私を食い入るように見ていた女性だ。

「はじめまして、清華さん。
私、久礼(くれ)鞠子(まりこ)と申します」

「はじめまして、神鷹清華です」

にっこりと笑顔を作り、彼女に返す。
久礼というと神鷹の分家で、現当主は大臣だったはず。

「あまりお見かけしたことがないと思うのですけど……?」

彼女は可愛らしく小首を傾げて見せたが、完全に私を見下していた。
たぶん、ここにいる誰よりも神鷹家と釣り合う家。
顔も悔しいが、誰もが美人と賞するだろう。
背だって私なんかと違い、モデル並みに高い。
認めたくないが、零士さんと並んで遜色ないのは彼女の方だ。

「そうですね、この手のサロンにはほとんど顔を出さなかったので」

仕事が忙しくて……というのは言い訳だ。
今も昔も、こういう腹の探り合いばかりの場所が苦手で避けていた。

「そうなのですね。
これからは仲良くしてくださると嬉しいわ」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

心にもないことを言い、鞠子さんは優雅に笑った。
私も本音を隠し、笑って答える。
鞠子さんが去っていき、ほっと息をついた。
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