政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
う、失敗した。
しかも、よりにもよって鞠子さんに指摘されるなんて。
くすくすという忍び笑いが耳に痛い。
もう、消えたいよ……。

私にとって地獄のようなお稽古が終わり、今日もお話タイムに突入する。

「もうお茶なんて何年もやられてないのでしょう?
忘れていても仕方ありませんわ」

鞠子さんがフォローしてくれ、取り巻きの皆様もうんうんと頷く。

「ありがとうございます」

お礼は言ったものの、これはフォローじゃないのはわかっている。
会社の同僚風に言えば。

『えー、その程度の女が、あの零士さんの奥さんだなんて信じられなーい』

……なのだ。
いくら鈍い私でも、これくらいはわかる。

「そう言えば清華さんは、ひとり暮らしをなさっていたのだとか。
尊敬しますわ、私には絶対、無理ですもの」

口ではそう言っているが、完全にバカにされているなー。
良家の子女が誰の手も借りずに完全ひとり暮らしだとか、彼女たちからすれば信じられないだろう。
私としては四六時中監視がついているような状態で、自由も制限されるあの生活は、苦痛だったんだけどな。

「そうですね、ひとり暮らしは楽しかったですよ。
ちょっと頑張ったときにご褒美で買う、ダッツのアイスが楽しみでした」

「ご褒美にダッツ……。
そ、それは……」
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