政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「え……」

お兄さんは大丈夫だと頷いているが、本当にそうなんだろうか。
だって父は私の話など聞かず、頭ごなしに怒鳴って……違う。
父には確かに反対されたが、先にヒステリックに叫んだのは私だ。
だから父は売り言葉に買い言葉ではないが、怒鳴り返すしかなかったのだ。
感情的にならず、こうやって誠心誠意自分の気持ちを伝えていれば、父も理解くらいはしてくれたかもしれない。

「はい、そうします」

「うん」

眼鏡の奥で目尻を下げ、お兄さんが満足げに頷く。
その顔にドキッとした。
熱い顔を誤魔化すように紅茶を飲む。
今までいっぱいいっぱいで気にしていなかったが、お兄さんは凄く……格好よかった。
こんな人と一緒なんて、今日の自分の格好が子供っぽくなかっただろうかとか気になってくる。
そんな私の気持ちとは裏腹に、お腹が派手にぐぅーっ!と鳴った。

「なんだ、腹が減っているのか」

くすくす笑いながらお兄さんがメニューを差し出してくる。

「あ、えと」

いくら食欲をなくしていた原因がなくなったからといって、これは恥ずかしすぎる。

「なんでも頼め。
遠慮しなくていい」

「えと。
……じゃあ」
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