政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
赤くなっているであろう顔でメニューを受け取り、俯いた。
お昼を食べていないし、お腹は空いている。
パラパラと捲りながら、すっかり忘れていた今日という日に気づいた。

「その。
ケーキを頼んでもいいですか」

「いいよ。
……すみません」

お兄さんが店員を呼び止めてくれたので、紅茶のシフォンケーキを頼む。

「やっぱり女の子は食事よりケーキか」

お兄さんはひとりで納得しているが、これはそれもあるが違う理由もあるのだ。

「今日、誕生日なんです。
父と喧嘩しちゃったし、きっと誰も祝ってくれないからせめてケーキを……」

さっきまでおかしそうだったのに、急にお兄さんの顔から笑みが消えた。

「そうか、おめでとう。
いくつになったんだ?」

「十五、です」

誕生日は毎年、家族揃ってディナーに出掛けていた。
もちろん、今年もその予定だったが、私は父と揉めてプチ家出中なので中止だろう。

「すまない、ちょっと電話」

マナーにしていた携帯が震えたのか、ちらりと私に見せてお兄さんは席を立った。
ひとりでもそもそとケーキを食べる。
こんなに味気ない誕生日ケーキは初めてだ。
それでもイケメンのお兄さんに祝ってもらえたのでちょっとマシか
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