政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
第四章 素敵な結婚式の計画
零士さんが台湾から帰ってきた翌日は……朝からバタバタしていた。

「なんか不満があるのか」

朝食を食べながら、前に座る私を零士さんが眼鏡の奥からちらりと見る。

「いえ……」

適当に笑って誤魔化した。
……本当は。
せっかくできた時間はゆっくり休んでほしい。
滅多に家にいないと言っていた。
明日から北海道、九州、沖縄と周り、次に帰ってくるのは十日後だと言っていた。
なら、できた時間は私になど使わず、身体を休めてほしい。
でも、少ない休みの日でいろいろしなければいけないのもわかっている。
ジレンマ。

朝食のあとは宝飾商の人間が来て、結婚指環と婚約指環のオーダーをした。

「うん、いいんじゃないか」

「そうですね、いいと思います」

できあがったデザイン画を見て、零士さんが満足げに頷く。
彼のこだわりと私の要望が反映された指環は、このとおりできあがれば素敵なものになるだろう。

お昼を食べたあとは式場の下見。
指環は来てもらえばいいが、式場はそうはいかない。
実際に見た方がいいだろ、と連れ出された。

教会に到着し、案内の方と共に中に入る。

「素敵です……!」

戦後に建てられた現代モダンの教会は、高い天井から燦々と光が降り注ぐ。
静謐な空気に、背筋が自然と伸びた。
< 83 / 252 >

この作品をシェア

pagetop