政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「ここだとうちがよく利用するホテルも近いし、申し分もない」

隣に立つ零士さんが周囲を見渡す。
いいな、ここ。
うん、悪くない。
でも……私の理想とはちょっと違う。

「別にいますぐ決める必要はない。
次に行くぞ」

「はい」

彼に連れられて教会を出る。
零士さんはいくつか、候補を挙げていた。

今度来たのは教会ではなく、大正時代に建てられた国の重要文化財だった。
今度も係の方に中を案内してもらう。
式は講堂かホールを選べるらしい。

最初に案内された講堂はシックで、温かみがあった。

「ここもいいですね……」

零士さんと私が式を挙げている風景を想像してみる。
ここだとウェディングドレスは、レトロ調がいいかな。

「ホールも見るだろ?」

「そうですね」

次に行ったホールは、大きな窓から明るい光が差し込んでいる。

「あ、ここ……」

大きなステンドグラスの窓が、零士さんと訪れたパリの教会を彷彿とさせた。
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