政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「ただし、実家へ行くときは運転手付きだ。
……わかる、だろ?」

零士さんの言葉に頷く。
あの場に、お付きの人間なしで来ている人間なんてほぼいない。
その中で、自分で車を運転していったら……想像しなくても結果なんてすぐにわかる。

「そういう特権意識は嫌いだが、合わせるフリをしておけば面倒ごとが回避できるならしておけばいい」

きっと、零士さんの言うこれがこの世界を渡っていく処世術。
覚えておこう。

「それと、俺がいない日、清華がひとりにしておいてほしいと言うのなら、メイドにはそのように命じておくが?」

「あー……」

作業に集中しているときは確かにひとりにしておいてほしいが、作業部屋を与えてもらっているので中にまで入ってこられなければ問題ない。
私はただ。

「ひとりにしてほしいってわけじゃないんです。
自分のことは自分でできるので、その分メイドさんの手を煩わせたくないな、って」

「清華は優しいな」

零士さんがそっと、私の髪に触れる。

「しかし彼女たちはそれが仕事なんだから気にしなくていい」

「でも……」

本当に?
零士さんの言うことは一理ある。
彼女たちはそれが仕事。
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