政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
私だって仕事を奪うのは悪いんじゃないかと考えた。

「清華の身の回りの世話は彼女たちに任せればいい。
それで清華は、感謝すればいいんだ」

「あ、そうですね!」

なんでそんな簡単なこと、気づかなかったんだろう。
彼女たちにとって私の世話は仕事。
ならありがたくお世話されて、感謝すればいい。

「お礼の気持ち、忘れないようにします」

「うん、そうしたらいい」

零士さんは本当に素敵な人だ。
こんな人に惹かれないかと言えば……少しずつ、好きになっている自覚はある。
昨日より今日。
今日より明日。
零士さんに満たされていく心。
きっと遠からず、私は零士さんを好きになるんだろうな……。


翌朝、零士さんまた仕事で出ていった。

「十日……」

これからもこんな調子なんだろうか。
メイドさんに聞いたら本当に滅多に帰ってこないらしく、「お世話できる人がいて嬉しい」とまで以前から働いていた方の人に軽く喜ばれたくらいだ。
零士さんはフージンエアラインをはじめ、ホテル、レストラン、人材派遣など手広くやっている。
忙しいのは当たり前。
わかっているけれど、……もうちょっと、家にいてほしいな。
なんていうのはわがままなんだろうか。

それからしばらくは、同じような日々が続いた。
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