政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
大きなぬいぐるみは……買いに行かなかった。
零士さんの枕を抱いて寝るのが意外と寝心地がよく、必要なくなったのだ。

「清華?」

無意識に夜、零士さんの枕に手を伸ばし、帰ってきていた彼が怪訝そうな顔をする。

「あ、えと。
……なんでもない、です」

……あぶない、あぶない。
こんなことしているなんて知られたら……笑われる?
それとも呆れられる?

「……もしかして俺がいない夜、代わりに枕を抱いていたのか?」

意地悪く、零士さんの右の口端が上がる。

「そ、そんなわけ、あるわけないじゃないですか」

否定しながらも言葉はしどろもどろになった。

「ふーん、そうか」

しかし零士さんはニヤニヤとなおも愉しそうに笑っている。

「そ、そうですよ」

怒ったフリしてさっさと布団に潜り込んだ。

「怒った清華も可愛いな」

零士さんも布団に入り、覆い被さるように私の額に口付けを落とした。
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