今さら好きだと言いだせない
「そうだなぁ……一緒に来た彼氏はほかの女の子と仲よくしてるね、みたいなことは言ったかな」
「……」
「事実だろ？」

　俺は徳永さんを凝視しながらグッと奥歯をかみしめる。たしかに俺が悪い。俺が町宮のそばにいなかったからこうなったのだ。

「でも彼女を傷つけるつもりはなかった。お前から奪う気ではいるけどな」

　今のは冗談で言ったとは思えない。その証拠に徳永さんは真顔だ。

「奪う？　わかりました、って承諾すると思います？」
「先輩の俺を睨むなよ。怖いから」
「プライベートの恋愛に先輩も後輩もないんだよ。あっさりと渡すわけないだろ」

　徳永さんが余裕ぶったような笑みを薄っすらと浮かべる。
　それを見た北野が場を和ませようとして「ビールのお代わりを頼みますね！」と言葉をかけてきたけれど、悪いが俺は無視だ。楽しく酒を飲む気にはなれない。

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