今さら好きだと言いだせない
 約束の土曜日になり、私は朝からいそいそと出かけるための準備を始めた。
 芹沢くんが私のマンションまで車で迎えに来てくれるそうで、気がつけばその時間が迫ってきている。

 服装はオフホワイトのニットで上下セットアップにして、ライトグレーのコートを羽織った。
 少し地味かな? でも張り切りすぎても引かれるし……と、迷いに迷ってのコーデだ。
 何度も鏡でメイクなどをチェックしていたら、芹沢くんからマンションの前に着いたとメッセージが入った。
 バッグを持ってあわてて玄関を飛び出す。

 マンションの外に出ると路肩に車が一台、ハザードをつけて停車していた。黒のSUV車だ。
 もしかしてと私が数歩近づけば、運転席の扉が開いて芹沢くんが降りてきた。
 濃いグレーのニットに黒のアウターを合わせていて、カッコよすぎてボーッと見とれてしまいそうだ。
 細身のジーンズがまた、彼の足の長さを強調している。

「おはよう。寒いからとりあえず乗って?」

 芹沢くんが私を車へと(いざな)い、助手席のドアを開けてくれた。
 なんだか本当に恋人同士のデートみたいで、シートに座った途端、急に緊張が増してきた。
 ダメだ。今からこんなことでは今日一日もたない。とにかく落ち着けとばかりに私はフーッと息を吐いた。

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