今さら好きだと言いだせない
 呼吸が苦しくなるころに解放され、大きく息を吸い込んで酸素を補給する。
 それでも彼は私をガッチリと腕の中に閉じ込めたまま、耳の下から首筋に熱のこもったキスの雨を降らせ始めた。

「せ、芹沢くん……」

 彼が私に欲情しているのを感じ、このまま流されていいのかと一瞬不安がよぎった。
 だって、今の彼の熱情を考えたら絶対にキスだけでは済まない。私たちは一線を越えてしまう。

「……嫌ならやめる」

 引き返す理性が芹沢くんにはまだ残っていたようだ。
 だけど私がなにも言わず、そのあとのキスを受け入れたことで、彼は拒まれていないと判断した。

 芹沢くんはそっと私の腕を持ち上げ、立ち上がった私たちは隣の寝室のベッドにもつれながら沈んだ。
 なぜこうなっているのかわからない。
 でも、大好きな人が私を抱こうとしている。
 嫌なわけがない。夢を見ているのではないかと思うくらい幸せだ。

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