今さら好きだと言いだせない
 十二月も半ばに差し掛かり、会社の中はどこの部署も忙しくてバタバタとしている。
 私も例にたがわず忙殺されていて、気がついたらあの日から一週間以上過ぎていた。
 今は忙しいのは逆にありがたい。変に芹沢くんを意識せずに済むし、あれやこれや悪い想像をして悩まずに済む。

「町宮さん、お疲れ様です」

 最近は残業続きだったが、たまには早く帰ろうと定時で上がると、一階のロビーで溝内さんと出くわした。
 彼女もちょうど退社するところだったみたいだ。

「溝内さんもお疲れ様」

 十二月は営業部の接待なんかが増えるため、経理部も大変だと思う。
 彼女は優秀だからミスしないし、あまり残業もないのだろうけれど。

「今日は早く上がれたんですか?」
「うん。急ぎ以外は明日にしようと思って」
「そうですよね。こういう日もないと、デートできないですもんね」

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