今さら好きだと言いだせない
翌日も仕事で忙殺されながらサンプルを届けに赴いた研究部で、徳永さんとバッタリ鉢合わせしてしまった。
「お疲れ様です」
ほかの社員もいるところであからさまに無視もできないので、私からごく普通に言葉をかけると、彼も柔和な笑みをたたえて「お疲れ様」と返してくれた。
徳永さんと接するのは仕事の話だけならそこまで嫌ではない。
研究部の人に用件を伝え、サンプルを置いて部屋を出る。
すると私の背を追うように、徳永さんが後ろから小走りでやって来た。
「町宮さん、待って」
走って逃げたくなったが、会社の中なのでそれはまずい。
私は歩みを止め、「なんでしょうか?」と徳永さんと対峙する姿勢を見せた。
「この前は気を悪くさせてごめん。驚かせちゃったし」
徳永さんはさすがにバツが悪いのか、髪をかき上げながら顔をしかめた。
彼が口にしているのは、付き合っている恋人がいると暴露された先日のエレベーターでの会話だ。
「よく考えたらさ、町宮さんは二股とか器用に出来るタイプじゃないよね。それをわからずに話を持ちかけた俺が悪かった」
「その話なら済んでるので、もういいです」
「お疲れ様です」
ほかの社員もいるところであからさまに無視もできないので、私からごく普通に言葉をかけると、彼も柔和な笑みをたたえて「お疲れ様」と返してくれた。
徳永さんと接するのは仕事の話だけならそこまで嫌ではない。
研究部の人に用件を伝え、サンプルを置いて部屋を出る。
すると私の背を追うように、徳永さんが後ろから小走りでやって来た。
「町宮さん、待って」
走って逃げたくなったが、会社の中なのでそれはまずい。
私は歩みを止め、「なんでしょうか?」と徳永さんと対峙する姿勢を見せた。
「この前は気を悪くさせてごめん。驚かせちゃったし」
徳永さんはさすがにバツが悪いのか、髪をかき上げながら顔をしかめた。
彼が口にしているのは、付き合っている恋人がいると暴露された先日のエレベーターでの会話だ。
「よく考えたらさ、町宮さんは二股とか器用に出来るタイプじゃないよね。それをわからずに話を持ちかけた俺が悪かった」
「その話なら済んでるので、もういいです」