今さら好きだと言いだせない
「なんか今の言い方、町宮さんらしくないな。怖いよ」

　自分では感情を表に出していないつもりだったけれど、知らず知らずのうちにキツめの口調になっていたみたいだ。
　とは言え、この場面で笑うなんて、徳永さんはこういうことに相当手慣れているのだと直感した。

「彼女さんのこと、もっと大事にしてください。本人がいないところで別れるなんて簡単に口にしないで」
「簡単ではないんだけどなぁ。向こうは俺にベタ惚れだから」
「そちらの恋愛事情は知りませんけど、私は芹沢くんが好きですから」

　私は自分の気持ちを必死に訴えた。
　私と徳永さんはどこまで行っても平行線なのだから、こんな話し合いは不毛だ。

「でもさ、会社で芹沢とふたりでいるところを全然見ないし。付き合ってても不満ばっかりじゃない？」
「そ、そんなことは……」
「芹沢より俺と付き合ったほうが絶対楽しいよ」

　徳永さんがズイッと一歩距離を詰めてきたので、私はそれにおののいて自然と後ずさりする。
　今はもう、徳永さんの見た目の爽やかさに騙されたりしない。

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