今さら好きだと言いだせない
「そのへんで辞めとけよ。町宮は落ちないから」

 聞き慣れた声がしたと思ったら、たまたま通りかかったのか、私のすぐそばに高木さんが立っていた。

「高木には関係ないだろ」
「そうだな。でも町宮が困ってるし」

 どうやら今は高木さんは私の味方のようだ。発言から、助けに入ってくれたのだとはっきりとわかった。

「徳永、本来ゲスなのにいい男を装うなんて器用だな」
「うるさい。お前だって十分ゲスだろ」

 言い返された高木さんが吹き出すように笑う。私からすれば、どちらがゲスかで言い争っている場合ではないと思うけれど。

「それ以上町宮に手を出したら芹沢に刺されるぞ? 同期のよしみで忠告してやってるんだ。ありがたく思えよ」
「余計なお世話だ」
「俺としては町宮がもてあそばれてすぐ捨てられるくらいなら芹沢と付き合ってるほうがマシだ。徳永、お前に元々勝ち目はないんだからあきらめろ」

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