今さら好きだと言いだせない
 たしかに高木さんと徳永さんは仲がいい同期というイメージはまったくないけれど、それほどまでに不仲だったのだろうか。

「イケメンで仕事ができて女にモテて。それで普通に性格が良けりゃ、俺は単に(ねた)むだけで済むけど……」
「……妬むんですね」
「アイツ、“爽やか仮面”を付けてるだろ? 町宮もさすがに気づいてると思うけど、徳永の腹の中は真っ黒なんだよ。それを隠して綺麗な顔で女に近づいて食い散らかしてるみたいだし。騙すようなやり口が気に入らない」

 話を聞いていると高木さんのほうが一方的に嫌っている感じがするものの、もしかしたらふたりは入社当時から反りが合わないのかもしれない。

「高木さんがそんなふうに思っていたなんて、初めて知りました」
「男の俺でもあの表の顔には騙されかけたから。そりゃ、俺だっていろいろと最低だけど。なんていうか……俺と徳永ではゲスの種類が違うんだよな。俺は堂々とやるけど、アイツは裏でコソコソ上手に、って感じで」

 最低なことを堂々とやっている自覚があるなら改めればいいのに。
 高木さんは徳永さんの裏表の激しい人間性の部分を言っているのだとわかるから、今はとりあえず黙って聞いておいた。

「それに、嫌がられてるのに彼氏がいる女を強引に口説こうとするところも腹が立つ。顔がいいからって調子に乗りすぎだろ」
「高木さんって……実は女性にやさしいんですね」
「今ごろ気づいたのか? そうだよ、俺はやさしいの!」

 高木さんは不真面目な感じは否めないけれど、性格的に裏表はない。
 軽薄な部分を隠そうとしないのも、逆にわかりやすくて、こちらとしても対処ができる。

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