今さら好きだと言いだせない
 首を縦に振りながらも箸を置いてしまっている私を見て、芹沢くんがお皿に乗った唐揚げを箸でつまんで、私の口へと差し向ける。

「食っとかないと夜までもたないって」
「え、あの……」
「ほら!」

 芹沢くんの勢いに押された私は、戸惑いながらも口を開いてしまう。
 その瞬間、少し冷めた唐揚げが丸ごと口の中に入ってきた。
 ひとくちで食べるには大きすぎる鶏肉の塊を咀嚼するのに必死で、ハムスターのように頬を膨らませた私は、彼に抗議しようにも喋れない状態だ。

「うわ、かわいい」

 眉根を寄せながらなんとか唐揚げを飲み込もうとしている私を見て、芹沢くんがやわらかい表情で笑っている。
“かわいい”なんて急に言われたから、危うくむせそうになった。……だけどやっぱり、その言葉はうれしい。

「面白がらないで」
「はは。残りも俺が全部食べさせようか?」
「いいよ!」

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