今さら好きだと言いだせない
「あ、あれは……徳永さんのネクタイが曲がってたから、つい手が出ただけだよ」
「徳永さん、イケメンだもんな」

 いやそれ、同期で一番イケメンなあなたが言います?
 そんなふうに突っ込みそうになって、咄嗟に言葉を飲み込む。

「今後は徳永さんも町宮を意識するだろうけど、その前に高木さんにこれ以上絡まれたら厄介だろ」
「別に徳永さんを狙ってなんかないから!」
「え、違うのか」

 芹沢くんがふと歩みを止める。
 街灯の明かりの中で、彼が不思議そうな顔をして一瞬天を仰いだのが見えた。

「その気がないのに、あれはダメだって」
「なにが?」
「男は勘違いする生き物なんだよ」


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