今さら好きだと言いだせない
「経費ですか?」
声をかけてきたのは私より一年後輩の溝内 凜珈さんだった。すでに凍り付きそうなほど声が冷たい。
「あ、そうなの。これ……」
「預かりますね。お待ちください」
すんなりと受けつけてくれそうな人にお願いしようと考えていたのに、よりによって先に彼女に捕まってしまうとは……。
とは言え、やさしく対応してくれる人など今の状況では誰もいそうにない。
あきらかな不備があればその場で言い渡されるので、しばらくの間ドキドキしながら結果を待つ。
「これは受理できますが、こっちはダメです」
「え?!」
「項目のところ、書き方が間違っているのでやり直してください」
ズイッと仏頂面で片方だけをファイルごと突き返された。
あれだけチェックしたのに? と思いながら視線を書面に落とすと、返されたのは私のではなく高木さんの分だった。
「ごめんね。これ、預かった分なの。高木さんに言っとくね」
「こちらは誰の書類であろうと関係ないので。不備がある申請は通せません。経費で落ちなかったら、困るのはご本人でしょう」
すべては高木さんの落ち度だ。不備があるこちらが悪い。
だけど……今のはすごく冷淡で嫌な言い方だ。経理部はこんな職場環境でよくストレスが溜まらないなと思う。
というか、私は気づいている。
溝内さんは私を嫌っているから、他の人に対するよりもさらに当たりが強いのだと。
嫌いならば、今だって私を見つけても無視して誰かに任せればいいのに、わざわざ自分から声をかけてくる。
私としては普通に接するしかないものの、彼女と会話したあとはいつも疲弊して気分が沈む。
声をかけてきたのは私より一年後輩の溝内 凜珈さんだった。すでに凍り付きそうなほど声が冷たい。
「あ、そうなの。これ……」
「預かりますね。お待ちください」
すんなりと受けつけてくれそうな人にお願いしようと考えていたのに、よりによって先に彼女に捕まってしまうとは……。
とは言え、やさしく対応してくれる人など今の状況では誰もいそうにない。
あきらかな不備があればその場で言い渡されるので、しばらくの間ドキドキしながら結果を待つ。
「これは受理できますが、こっちはダメです」
「え?!」
「項目のところ、書き方が間違っているのでやり直してください」
ズイッと仏頂面で片方だけをファイルごと突き返された。
あれだけチェックしたのに? と思いながら視線を書面に落とすと、返されたのは私のではなく高木さんの分だった。
「ごめんね。これ、預かった分なの。高木さんに言っとくね」
「こちらは誰の書類であろうと関係ないので。不備がある申請は通せません。経費で落ちなかったら、困るのはご本人でしょう」
すべては高木さんの落ち度だ。不備があるこちらが悪い。
だけど……今のはすごく冷淡で嫌な言い方だ。経理部はこんな職場環境でよくストレスが溜まらないなと思う。
というか、私は気づいている。
溝内さんは私を嫌っているから、他の人に対するよりもさらに当たりが強いのだと。
嫌いならば、今だって私を見つけても無視して誰かに任せればいいのに、わざわざ自分から声をかけてくる。
私としては普通に接するしかないものの、彼女と会話したあとはいつも疲弊して気分が沈む。