今さら好きだと言いだせない
「バッサリとフラれたのにどうしてもあきらめられなくて。実は昨日、二度目の告白をしました。芹沢さんに恋人がいないなら、どうか私にチャンスをください、と」

 溝内さん、すごいな。一度断られた相手に再度挑むなんてメンタルが強い。

 そんなふうに驚いたものの、なんだか切なくなってきた。ずっと好きだった人をあきらめめようとしても出来なくて、彼女は辛い思いをしたのだろうから。

「そしたら、最近町宮さんと付き合い始めたって言われて……。ふたりは元々仲が良さそうでしたしね。ついにくっ付いちゃったのなら、私はもう本当にあきらめるしかないです」

 待って待って。付き合ってないよ! と手を横に振って完全否定しそうになったが、寸でのところでそれを思いとどまった。

「芹沢くんがそう言ったの? 私と付き合ってる、って?」
「そうです……」

 これはあとで芹沢くん本人に確認しなくては。なぜそんな嘘を言ったのか、と。
 今ここで、それは違うよと溝内さんに暴露してしまえば、なんだかややこしくなるかもしれないと咄嗟に頭に浮かんだので、とりあえず今は口をつぐんでおく。

< 45 / 175 >

この作品をシェア

pagetop