今さら好きだと言いだせない
 眉根を寄せて考え込む私を目にし、溝内さんが怪訝な面持ちになった。
 私はそれに気づき、あわてて顔を元に戻す。

「なんか……ごめん」
「いえ、勝手に嫉妬して、先輩の町宮さんに喧嘩を売るような態度を取り続けたんですから、謝らなきゃいけないのは私のほうです。町宮さんはなにも悪くないので」

 わざわざこうして謝りに来るのだから、溝内さんは真っすぐで正直で、いい子だと思う。

「私、芹沢さんと町宮さんのこと応援します」
「え?!」
「芹沢さんには幸せでいて欲しいですから」

 幾分無理をしたような笑みを向けられたけれど、私は複雑な心境から情けない顔しかできなかった。
 応援すると言われても……

 こんなことになっているのは、なにか芹沢くんなりに理由があるはずで。
 とにかく彼と話をしてから溝内さんの誤解を解くとしよう。

 頭の中で必死に順序を考えていたら、出入口から営業部の女性が入って来て、私たちの会話は自然とそこで終了する。
 ふたりでトイレの外に出ると、溝内さんが私に会釈をしてエレベーターのほうへ去って行った。

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