今さら好きだと言いだせない
「南帆! 経理部なら私が行ったのに」
自分のデスクへ戻ってくると同僚の廣中 燈子が、ぐったりとする私を心配して声をかけてくれた。
彼女とも同期入社で同じ部署なので、今ではなんでも話せる仲の良い関係だ。
「大丈夫だった?」
「エネルギーを吸い取られちゃった。空気が凍ってて、すごくピリついてた」
「やっぱり」
燈子は肩をすくめながら眉根を寄せ、心底恐ろしいという顔をした。
そんなお茶目な燈子はかわいいし、明るくて愛想がいいから私は彼女の存在に救われている。
「あ、高木さん、これ見事に突き返されました。項目のところを訂正しないとダメみたいです。今度はご自分で提出してくださいね」
そばを通りかかった高木さんに却下をくらった書類のファイルを手渡すと、彼もまた心底げんなりとした表情になった。
いつも細いフレームの眼鏡をかけているが、指でクイッとそれを持ち上げて書類をまじまじと見つめる。
「あー、悪かった。誰に渡せばいい?」
「溝内さんです」
高木さんは普通にうんうんとうなずいてくれたけれど、横にいた燈子が「うわぁ……」と途端に嫌そうに顔をしかめた。
自分のデスクへ戻ってくると同僚の廣中 燈子が、ぐったりとする私を心配して声をかけてくれた。
彼女とも同期入社で同じ部署なので、今ではなんでも話せる仲の良い関係だ。
「大丈夫だった?」
「エネルギーを吸い取られちゃった。空気が凍ってて、すごくピリついてた」
「やっぱり」
燈子は肩をすくめながら眉根を寄せ、心底恐ろしいという顔をした。
そんなお茶目な燈子はかわいいし、明るくて愛想がいいから私は彼女の存在に救われている。
「あ、高木さん、これ見事に突き返されました。項目のところを訂正しないとダメみたいです。今度はご自分で提出してくださいね」
そばを通りかかった高木さんに却下をくらった書類のファイルを手渡すと、彼もまた心底げんなりとした表情になった。
いつも細いフレームの眼鏡をかけているが、指でクイッとそれを持ち上げて書類をまじまじと見つめる。
「あー、悪かった。誰に渡せばいい?」
「溝内さんです」
高木さんは普通にうんうんとうなずいてくれたけれど、横にいた燈子が「うわぁ……」と途端に嫌そうに顔をしかめた。