今さら好きだと言いだせない
 自然にポツリと本音を漏らしたら、思いきり芹沢くんにあきれた顔をされた。
 彼にはもう少し自分の人気の高さを自覚してもらいたい。

「……わかった。溝内さんは私にはあきらめるって言ってたし、高木さんは変わり身が早そうだし。それぞれ落ち着くまで、ってことで」
「うん、それでいこう」
「だけど、燈子には事情を話しておきたいの」

 仲の良い同僚であり友人である燈子にまで嘘はつきたくない。彼女にはいつも精神的に助けてもらっているから。

「廣中なら大丈夫だろう。協力者になってもらおう」

 彼はそう言ったけれど、私としてはそこまで燈子を巻き込むつもりはなくて。ただ真実を知っていてほしいだけだ。
 なぜこんなことになってしまったのかと、紅茶の入ったカップを両手で持ちながらかすかに首をひねる。

「じゃあ、これ渡しとく」

 芹沢くんはスーツのポケットからなにかを取り出し、私に受け取れとばかりに差し出してくる。

「なに?」

 よくわからないまま受け取ってしまい、手の中の物を確認しつつ尋ねた。


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