今さら好きだと言いだせない
§5.不甲斐ない
***
俺が所属する企画業務部は、人当たりが良くて親切な先輩が多く、平和で働きやすい部署だった。
……半年前に社内異動で高木さんがやって来るまでは。
「なぁ、芹沢、ここに円グラフって必要か?」
異動してきて間もない高木さんが、ノートパソコンを開けたまま俺のデスク脇にやって来て、画面を指さしながら尋ねた。
「必要ですよ。わかりやすい感じで入れておいてください」
「いちいちめんどくさいなぁ」
「それがなかったら営業部の人たちが会議するとき困るはず、ですよね?」
あなたの言う面倒な作業をやるのが、俺たちの仕事だ。
だいたい、つい最近まで営業部にいたのだから、資料の作成が重要なことくらい承知しているだろうに。
そう、高木さんはすべてわかっているのだ。
なのに慣れないフリをしながら面倒な仕事をほかの人に押し付ける。こういう人間は狡猾で一番やりにくい。
俺が所属する企画業務部は、人当たりが良くて親切な先輩が多く、平和で働きやすい部署だった。
……半年前に社内異動で高木さんがやって来るまでは。
「なぁ、芹沢、ここに円グラフって必要か?」
異動してきて間もない高木さんが、ノートパソコンを開けたまま俺のデスク脇にやって来て、画面を指さしながら尋ねた。
「必要ですよ。わかりやすい感じで入れておいてください」
「いちいちめんどくさいなぁ」
「それがなかったら営業部の人たちが会議するとき困るはず、ですよね?」
あなたの言う面倒な作業をやるのが、俺たちの仕事だ。
だいたい、つい最近まで営業部にいたのだから、資料の作成が重要なことくらい承知しているだろうに。
そう、高木さんはすべてわかっているのだ。
なのに慣れないフリをしながら面倒な仕事をほかの人に押し付ける。こういう人間は狡猾で一番やりにくい。