DOLL~肌に色映る頃
「お待たせ」アキラが入ってくる。

急に現実に戻された感じがした。アタシ、ここに何しに来たんだろ…

「ねぇ、アキラ。これからどうするの?働くの?」

「決めてない。とりあえずは金もないし、親元に帰ってくるかって感じ?」

そう言うと、横に座ってアタシの肩を抱いた。

アタシは、急に怖くなってマンガを選ぶフリで、その腕からすり抜けた。

すかさず後ろからアキラが抱きしめる。

「イヤ…」アタシは思わず言った。ハッとした。

アキラを見る。ぼーっとしているように見えた。

「ごめん…帰るね!」アタシは、そのまま飛び出した。

追ってくる人はなかった。
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