執事的な同居人
「俺さ、母さんと二人暮らしなんだ。」
目が合うと彼は無理にいつもの笑顔を見せようとする。
「父さんは俺が幼い頃に事故で亡くなって、それから母さんとずっと二人で暮らしてる。
…だからかな、誕生日とか祝ってあげたいんだよ。もう母さんには俺しか祝ってやれないから。
…もう父さんの事で悲しんでほしくないから。
ちょっとでも笑顔になれたらいいなって思ってさ。」
「父さんだって、ずっと泣かれていても困るだろうし。」そう笑う王子。
だけど私がその話を聞かされて笑ってられない。
「……ハハッ、そんな顔すんなって」
辛そうな顔をする私にポンポンッと軽く頭を叩く。
「……だって、全然笑えない」
「笑っていいって!もう終わった事なんだし!ほら、行こう!」
青に切り替わった信号を見て、王子は私の腕を掴み歩いて行く。
そんな彼の手が微かに震えてるのに気付くのは私だけ。
「………でも、話せて良かったよ」
「え?」
ふいに王子がそう呟いた。
「今日は俺のことを少しでも知ってもらうために呼んだ。それも呼び出した理由のひとつなんだ。」
「……なにそれ」
困った顔をすれば「そのまんまだよ」と爽やかに微笑む。