執事的な同居人
「まだ、言わないよ」
「っ、」
「俺のことそんなに知らないと思うし、そーゆー事考えたことないでしょ?」
「う、ん……」
頷くと王子はそんな私の顔を覗き込む。
「……でも、俺に少しでも気がある内は覚悟しておいて。」
ニッと怪しい笑みを浮かべる彼に不覚にもドキッとしてしまう。
「…王子を好きになることはないよ」
「さあ?それはどうだろうね。予想は意外と外れるものだから」
私の手元にある髪飾りの入った小さな袋を指差すと、
「それ、ちゃんと使ってよ?使ってくれないと襲うかも。」
「なっ…!」
そんなことをヘラリと笑って言うものだから、慣れてない私はカッと赤くなる。
その反応にクスリと笑った王子。ムカつく…!
「本当に送らなくて平気?」
「結構ですっ!!さようなら!!」
赤い顔を隠すように王子に背を向ける。
たぶん、またその反応を面白がって笑っているだろう。
「なあ、待って。最後に一つだけ」
「っ!?」
腕を掴まれると反射的にピタリと止まる。
「王子じゃなくて。俺、ちゃんと名前があるから。」
「知ってるし……」
「ん。だから、」
掴まれていた腕をグッと強い力で引っ張られる。
「カイって、呼べ」
怪しい笑みを浮かべた後、王子…いやカイはいつもの爽やかな笑みへと変化した。
……本当に次のターゲットは私らしい。