執事的な同居人






分かりつつも携帯を開ければ、やっぱりそれはカイからで。





『今日はありがとう。髪飾りちゃんと使ってね?』




(はいはい。使います使います)




脳裏でそう返事をする。



その後に届いたスタンプがちょっと面白くてクスリと笑ってしまった。




と。





「紀恵さん。」





綺麗な手がその携帯の画面を隠すようにして覆い尽くした。





「ご飯出来てますから、そろそろ食べましょう」

「わわっ、ちょっ…」





その綺麗な手がそのまま私の手首を掴むと、強引に引っ張るようにしてリビングへと連れて行かれる。





(えっ、なに、どうしたの?)




いつもなら呼びに来るだけでこんな事しないのに。




「颯太さん?」

「今日はハンバーグです。そろそろお肉系食べたかったでしょう?」

「なんで分かるの……」

「紀恵さんの事は大抵分かりますよ」





いつものように微笑む颯太さんだけれど目元は笑っていない。




どこか無理矢理
笑顔を作っているかのような。





(私は颯太さんの事がよく分からないよ)




出掛けようとしたら急に腕を掴まれて止められたり、どうしたの?って聞けば何もないって言うし。




………今だってそうだ。




それはいつも突然で



その度に心がモヤモヤして、その日1日はずっとその事ばかりを考えてしまうんだ。

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