執事的な同居人
「あっ、うん。……似合ってる?」
「はい。とても似合ってますよ。」
それはもう、本当に。
太陽のような笑顔に、たまにコロコロと気分が変わって少し子供っぽさのある紀恵さんはオレンジ色がとても良く似合う。
……相手の人も紀恵さんの事をよく見ているという事だ。
「そ、そうっ!?」
嬉しそうに笑って。
「…………………」
ああ、なんだか
________ムシャクシャしますね。
スルリ
気づけば
そのヘアクリップを外してしまった。
俺の手が、自然と。
「えっ、」
当然キョトンとする彼女の顔を見て
「あー……」
何やってんだ、俺。
「……歪んでましたよ。」
嘘をついた。
全然歪んでなんかなかった。
寧ろとても綺麗に付けられていたぐらいだ。
自分のした事に嫌気がさして、そのヘアクリップをまた紀恵さんの前髪へと付ける。
サラリと紀恵さんの綺麗な髪を触って。
「カバン、ありがとうございます。行ってきます」
そして逃げるようにその場を去った。
あのままあそこにいると、俺が俺じゃないような事をしてしまいそうになる。
(俺は何を妬いて……)
あのヘアクリップが
無性に俺をムシャクシャさせる。
「はぁ……」
無意識に溜め息が出た。
(ネクタイ、緩めよう…)
今だけは、なんだか、
キッチリしていられない。