執事的な同居人




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「おはようございます」




仕事場に着き、周りの人へ挨拶をする。


返される挨拶に会釈をしながら自分の席へと着けば、





「おはよう島崎」

「おはよ」





わざわざ俺の席へとやってきた久東(クトウ)が話しかけてきた。




「今日はやけに遅い出勤だな~?」

「……ああ、ちょっとな」





確かに、いつもより20分遅めだ。


遅刻ではないから大丈夫だけど。




「なになに、寝坊でもした?」

「してねーよ。……ちょっとバタついてただけ」

「ふーん?まあ、そんな事はどうでも良くてさ。今日の飲み会の場所、聞いた?」

「飲み会?」




………あっ。




「それ、今日?」

「えっ、忘れてたわけ?先週からウンザリするくらい課長に聞かされてたじゃんか」





確かにそうだ……


なのにすっかり忘れていた。




「なに?もしかして、先約でもあんのかよ」

「いや……」

「断ると課長めんどくせぇぞ~?今回は全員参加で!とか言って、課長がちょーノリノリだしな」

「………………」





先約はない。ない、が。




脳裏に浮かぶのは紀恵さんの顔。





「まあ、さ?たまには日頃のつらい事とか忘れるためにも、そういう場は大事だよな」

「………そうだな」





………日頃のつらい事、ね。



忘れたい事は、かなり沢山ある。




(早く帰る予定だったが…こればかりは仕方がないか)




連絡入れておこうか。とは考えたものの、紀恵さんとの連絡手段がない事に気がついて



どうしようか、と。

どうにか伝える方法はないかと考えた。




「…………あっ。」




…そうだ。


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