執事的な同居人
「…………………」
ギシッとベッドが軋む音。
それは俺がベッドに腰掛けたから。
すぐ近くには眠る紀恵さん。
その顔はとても気持ち良さそうに眠っていて
その柔らかそうな頬を優しく手で撫でた。
寝ているからか、少しだけ温かいその場所。
触れても彼女は起きない。
「………ほんと、無防備。」
指で、唇を愛撫する。
ぷっくり綺麗なその部分は、きっと俺がリップクリーム塗った方がいいと言ったから、ちゃんと塗っている事を表していた。
紀恵さんが高熱を出したあの時、
確かにキスをした。
したが、それはもちろん下心無しで。
早く飲ませた方がいいと俺の脳が判断したから、口移しで飲ませた。
寝ているにも関わらず抵抗するから
口移しの方が手っ取り早いと思って。
きっと、その事には勘づいているはず。
「………、…なあ」
最近は呼んでくれないけど
「颯ちゃんって、また呼んで」
眠る紀恵さんにそう声をかけた。
聞こえていないのは承知の上だ。