執事的な同居人






「火傷しますよ。」

「えっ?」

「ほら、これです」





火を消した彼はフライパンからまだ焼けていないウィンナーを取り出すと、まな板の上で切れ目を入れた。




「ウィンナーは切れ目を入れずに熱を加えると、皮が破れて中の肉汁が飛んでくるんです。火傷したくないなら切れ目を入れる事をオススメします」




そして切れ目を入れたそれを再びフライパンに乗せると、さっきの大きな音が鳴ることはなくなった。




「まあ切れ目を入れると味は落ちてしまいますけどね」

「し、知ってるし……」

「そうですか。それはすみません。ですが今度からは切れ目を入れてくださいね。



火傷、してほしくないんで。」




だからずっと見ていたのか。




「では、朝ごはん楽しみにしています」




そう言う彼は、あとは私に任せたと言わんばかりにリビングを出て行った。



部屋に戻ったのだろう。




また寝るのかな?

いや全然いいけどさ。




やることなすことが本当に執事のような、お母さんのような。




だけど強く引っ張られたあの手の感触は




男だった。


< 132 / 422 >

この作品をシェア

pagetop