執事的な同居人
「火傷しますよ。」
「えっ?」
「ほら、これです」
火を消した彼はフライパンからまだ焼けていないウィンナーを取り出すと、まな板の上で切れ目を入れた。
「ウィンナーは切れ目を入れずに熱を加えると、皮が破れて中の肉汁が飛んでくるんです。火傷したくないなら切れ目を入れる事をオススメします」
そして切れ目を入れたそれを再びフライパンに乗せると、さっきの大きな音が鳴ることはなくなった。
「まあ切れ目を入れると味は落ちてしまいますけどね」
「し、知ってるし……」
「そうですか。それはすみません。ですが今度からは切れ目を入れてくださいね。
火傷、してほしくないんで。」
だからずっと見ていたのか。
「では、朝ごはん楽しみにしています」
そう言う彼は、あとは私に任せたと言わんばかりにリビングを出て行った。
部屋に戻ったのだろう。
また寝るのかな?
いや全然いいけどさ。
やることなすことが本当に執事のような、お母さんのような。
だけど強く引っ張られたあの手の感触は
男だった。