執事的な同居人
「見覚えのある後ろ姿だな~って思ったら、やっぱり石沢サンだった」
「……話しかけなくていいのに」
「冷たいな~、話しかけるに決まってるじゃん。
休みの日に石沢サンと話せるチャンスなんだしさ」
カイの気持ちを知っているからか、
思わずその言葉にドキッとしてしまう私。
なんでこうも恥ずかしがらずにそんな事が言えるのだろう…
さすがモテ男。慣れてる。
「てかさ、」
そして再び話し始めたカイの目線は
私の手元にあって
「それ、買うの?」
「っ!」
カイに恋愛心理学という名の本を見られてしまった。
パッと慌てるように隠すけど、まあ意味がない。だってガッツリ見られていたし。
「恋愛心理学か~」
……ほらね。
しっかり名前まで覚えてるし。
「もしかして何か悩んでんの?」
「な、悩んでないっ!」
少し雑ながらもその本を棚に戻して逃げるようにその場を去る。
キスをしてきた年上の男の人の気持ちが知りたい、なんて言えるかよ!
もちろんカイは分かりやすく動揺を見せた私の跡をついてくるわけで
「それってさ、俺のことで?」
「断じて違うから」
「即答っ!」
ハハッ!と声を上げて笑う。
……何が面白いんだ。