執事的な同居人
「あっ……」
目が合うと身体は正直でカッと熱くなった。
鼓動が早まって、顔も熱い。
なぜか身体が硬直して動けなくて、視線は颯太さんから逸らせないまま。
「……………」
カイはそんな私を見逃さなかったのか、頬にあった手で私の頬をつねった。
「イッタ…!」
軽く頬に走る痛み。
なにすんのよ!と、やっと身体が動いて、頬をつねった本人であるカイをギロリと睨む。
この時のカイはいつもみたいにニコニコと微笑んでいなくて、
無表情だった。
そんな彼が私を背にして振り返ると
「初めまして、石沢サンの同居人さん。」
颯太さんに向かって、挨拶をした。
「ちょっ…!」
コイツがなにを考えているのか分からないから、何か言う前に止めに入ろうとするも
「初めまして」
颯太さんは困った様子を見せなくて、
いつものように笑顔でそう返事をした。
「あれ、動揺しないんだ?
同居してることがバレてて、もっと慌てると思ってたのに」
「慌てるもなにも、隠すようなことではないので。」
「へぇ…?じゃあ、
隠すようなこともしてない、
ってことですよね?」
ドキッ
カイは私に向かって言ったわけではないのに、なぜか私の身体に緊張が走る。
「同居人さんは社会人で、石沢サンは高校生。
もしそんなことがあったら、大問題ですよ?」
その言葉に、
颯太さんは未だ笑顔で
「ああ、心配しなくても
僕は紀恵さんに気なんてありませんよ。」
私の心にナイフを刺すような
そんな言い方をした。