執事的な同居人
私に気がないから、敬語なの?
会社ではずっと敬語だって言ってたのに。
……今使ってなかったじゃん。
「…………………」
気づけば
颯太さんが行ってしまうよりも先に、逃げるようにしてその場を離れた。
聞きたいことは山積みなのに
今はどうしても聞く気にならなくて
後ろからカイの声が聞こえるものの、
振り返りたくない。
振り返ってしまえば、自然と颯太さんの顔も目に映ってしまうから。
朝、キスをされて
颯太さんって私のことが好きなのかもしれない、と。心のどこかでそう思っていた。
そう思うと、
素直に嬉しい気持ちになったの。
………なんで今、こんなに傷ついているのかなんて、もう分かりきっていること。
私、颯太さんの事が好きなんだ。
好きだから…こんなに傷ついているんだ。
「石沢サンっ!」
パシッと掴まれた手。
無我夢中で走っていた足がやっと止まった。
追いかけてきてくれたのは
もちろんカイで
軽く腕を引っ張られると
「泣いてるの?」
顔を覗き込んで、
少し気まづそうに視線を逸らした。