執事的な同居人
虚言
───────────颯太side
「そ、颯ちゃん…!」
久しぶりにその呼び名で呼んでくれた。
相手は高校生
手を出してはいけない。
……だが、
そう考えるよりも先に
身体が動いてしまった。
「っ、!」
キスをしてしまうと
紀恵さんは目を丸くさせて「なんで?」っと言いたげな顔をする。
"紀恵のこと、これからもよろしく頼むよ。島崎は他のやつと比べて完璧だから安心して任せられる。"
その言葉が嫌なほどに俺の脳内でループした。
(だから、俺は完璧なんかじゃないんだって…)
今だって、自分の欲望を抑えきれずに、許可もなく紀恵さんにキスをした。
石沢さんとの約束は守らないといけないのに。
……信用を失ってはいけないのに。
「…………、……行ってきます。」
この場にいると、また紀恵さんを困らせるような事をしてしまいそうで
少し急ぐようにその場を後にした。
バタンッ、と。ドアが閉まり
「はぁ……」
小さく溜め息をついて軽くもたれかかる。
「ここに来るべきじゃなかったか…」
少しの後悔と反省、そして焦り。
こんなこと
……するつもりじゃなかったんだ。