執事的な同居人
その痛みに顔を歪ませていれば
「初めまして、石沢サンの同居人さん。」
やっと俺にその顔を見せた。
見覚えはない。ただ、俺と紀恵さんが同居している事を知っているのなら
「初めまして」
コイツが、紀恵さんと付き合っているであろう" 佐々野海 "なのだと、脳内でそう理解した。
「あれ、動揺しないんだ?
同居してることがバレてて、もっと慌てると思ってたのに」
「慌てるもなにも、隠すようなことではないので。」
「へぇ…?じゃあ、
隠すようなこともしてない、
ってことですよね?」
疑いの目。
…やけに勘が鋭いみたいだ。
「同居人さんは社会人で、石沢サンは高校生。
もしそんなことがあったら、大問題ですよ?」
コイツがやけに突っかかってくるのは、俺のことを警戒しているからだ。
(そんなこと、言われなくても分かってんだよ…)
頭が痛くて、無性にイライラする。
彼氏の立場からすれば、彼女が見知らぬ男と同居しているなんて嫌で仕方がないのだろう。
チラリと視線を紀恵さんに移せば、
その顔はどこか強張っている気がして
そんな顔をさせる原因って
コイツ?
それとも、俺?
(………いや、)
そんなこと、考えなくたって分かるだろ。