執事的な同居人
次の仕事もなんらくこなして、俺は約束通り夕方に帰ってきた。
家にいるだろう。そう思っていたが、紀恵さんの姿はない。
(まだ帰ってきてないのか……)
夕方には帰ると約束はしたが、帰ってきて欲しいという約束はしていない。
どこで何をしようがそれは紀恵さんの自由であり
"紀恵さんにとっても、僕は同じ家に住むただの同居人に過ぎないですから。"
自分で言った言葉を思い出した。
紀恵さんにとって俺はただの同居人。
俺にとっても紀恵さんはただの同居人でー…
「っ…………」
頭痛は未だに治らず、その痛さに顔を歪めた。二度とお酒なんて飲みたくない、そう思うほどに。
疲れた身体をソファーに預けてシュルッとネクタイを緩める。
頭の痛みと疲れた身体。それにより自然とソファーの背もたれに深くもたれかかる。
篠原が言っていたリンゴジュースはもちろん意味がなかった。
(次の仕事は休ませてもらうか……)
額に手を当てて深く溜め息。
こういう時に限って夜の仕事が入っている。
行く気がない。
横になってたい。
もう何もしたくない。
今の俺は誰がどう見たってだらけているようにしか見えないだろう。……石沢さんには見せられないような姿だ。