執事的な同居人
「…………………」
そんな俺に対して携帯が鳴る。
眉根を寄せてポケットから取り出せば、相手は次の仕事先のオーナーで。
「………もしもし。どうした、涼。」
涼(リョウ)
なぜ俺がオーナーに対して敬語じゃないのか、それは俺と涼が腐れ縁というやつだからだ。
涼とは大学時代に知り合った友達で、仲が良かった。
そんな涼が大学を卒業してすぐにホストクラブを経営した。
はじめのうちは人が集まらなかったみたいで、特に裏作業である厨房担当が見つからなかったらしく、何かとこなせる俺に頼み込んできたのだ。
その時の俺は断る理由がなかったし、一つ返事で頷いた。
今は昔に比べて人も集まり繁盛しているが、厨房の方は俺がいる事にだいぶ助かっているみたいで、今でも働いている理由はそういうこと。
『颯太!今日の勤務なんだけどさ~』
「あぁ…そのことなんだけど、」
休ませて欲しい。俺がそういう前に
『1人欠員が出ちゃってさ、颯太には接客の方に回って欲しいんだよ~ 過去に一回だけしたことあるじゃん?』
「……俺以外に誰かいるだろ。わざわざ慣れてない俺を外に出さなくても」
『あの時反響良かったんだって!その日の売り上げも颯太のおかげで爆上がりだったし。なあ頼むよ~やってくれね?』
「……………………」
頼まれると断れない。そういうところが俺のダメなところ。
「…………分かった。」
そして今はちゃんとした判断ができないということもある。頭痛が酷くてさっさと会話を終わらせたいと思うほどに。
『助かるー!!!じゃあまた後でな!』
明るい声と共にブツ…と電話が切れた。
深い溜め息をついて
(ご飯作らないと、)
重たい身体を起き上がらせた。