執事的な同居人
開いた口が塞がらない。
唖然とする、というのは、こういう時に使う言葉なのだと理解する。
「持って帰る物あるかな~ 見た感じ、特になさそうね。」
そんな私をその場に放置して、颯太さんの部屋を物色する。
勝手に触られてる。止めないと。
頭の片隅でそう思うも、
「っ…………」
なぜか身体が動かなかった。
見ているだけで、動けない。
何もかもが分からなくなって、頭がパンクしそうだった。
………ねぇ、颯太さん。
彼女がいるのに
なんで、
私にキスしたの?
「これ仕事のカバンかな~?
まっ、これだけ持っていこっと。」
その人はカバンを一つ手に持ち、
「じゃあね、妹さん。
一人暮らし楽しんでね」
ふわりと笑って玄関へ。
私の隣を通り過ぎたその時、
とても甘い香水の香りがした。