執事的な同居人






バタン、と閉まったドア。





その人がいなくなると、慌ただしい空間から一気に静けさが戻る。





「どういう…こと……」





足の力を無くしてその場に崩れ落ちた。



床はとても冷たくて、私の身体を冷やしていく。





私の心臓は無駄に速さを増していて、






"私は麗華。颯太くんの彼女だよ。今日ここに来たのは颯太くんの荷物を取りに来たの"





その時の彼女の顔と、その言葉。





そして





"じゃあね、妹さん。一人暮らし楽しんでね"





その2つが私の脳内で何度も再生された。





(颯太さんが、ここを出て行くってこと?)





あの人は颯太さんの荷物を取りに来たと言っていた。



結局持って行ってしまったのはカバン1つで



そのカバンは、少し前に初めて「いってらっしゃい」と声をかけて手渡したことがある物。




だから、あれは、仕事用のカバンだ。




それをあの人は持って行ってしまった。


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