執事的な同居人
「…………………」
紀恵さんの事を思い返すと、無性に"会いたい"という気持ちになった。
(ここがどこか知らないけど、早く出て行こう)
ベッドから出ようと端に寄るが
「っ、」
左手首に違和感。
引っ張られる感覚。
チラリとその部分に視線を当てれば、なぜかロープでベッドの柱のようなところに括り付けられていた。
(なんだ、これ)
グッと引っ張るも硬く結ばれているから意味がない。
(…………ああ、思い出した。)
麗華さんの相手をしていたとき、
途中涼に呼ばれて席を外し、戻ってから麗華さんにお酒を飲むよう勧められた。
もう一本ボトル開けたいから、と。
なんの疑いもなくグラスに入ったお酒を飲んだあと、少しして強烈な眠気に襲われたんだ。
その時まで眠気なんて一切無かったのに。
(盛られたか? 睡眠薬を)
だとすると、
俺をここに連れてきた人は
「あっ、起きてたんだ?」
タイミングよく部屋に入って来たその人は
ふわりと笑みを浮かべて
「おはよう、颯太くん。」
甘い声で俺の名前を呼ぶ